日本の国土面積の20%近くを占めるスギ・ヒノキ森林がもたらす花粉により、国民の約20%が花粉症に悩まされています。
シーズンの総花粉数は、前年7月〜8月の全天日射量に大きく依存することが知られています。日射量が多ければ花粉の飛散量が増えます。実際には秋の花芽調査を加味して試算されます。2007年夏は記録的猛暑でした。2008年早春の花粉は多いことが予想されています。
花粉の飛散期に外出、洗濯物、着衣等による間接的暴露により、くしゃみ、鼻汁、鼻閉、眼の痒み、鼻の痒み、咽頭違和感、咽頭痛、咳等の症状がでます。
以上の症状に、鼻汁中の好酸球増加、誘発テスト(花粉の抗原を実際に鼻腔に投与して反応を見る)、血液検査(抗原特異的IgEがスコア2以上)が加われば確実です。
花粉の回避が最も有効で、飛散量の多い日は外出を控えたり、外出時のマスク、めがね、帽子も有効です。帰宅時には衣類を着替えることも必要です。マスクはウイルスの予防と異なり、きめが粗くても構いませんが、顔にフィットする事が重要です。
薬物治療 市販薬(スイッチOTC)も随分増えてきました。花粉症の薬を参照下さい。 基本的には、@抗ヒスタミン剤、Aケミカルメディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン拮抗剤、トロンボキサン拮抗剤、Th2サイトカイン阻害剤、B鼻噴霧用ステロイド薬、C点鼻用血管収縮剤、D経口ステロイド薬、から選択します。近年は鼻粘膜用局所ステロイド剤の重大な副作用が無いことから@+B(+A)が主流となっています。目の症状に対する点眼薬は抗ヒスタミン剤が主流です。内服薬も鼻炎症状よりは効き難いようです。ステロイド点眼薬は眼圧上昇を来すことがあるため、余程の症状が無い限りは避けた方が無難です。
免疫療法 @減感作療法:週一回の皮下注射を6ヶ月後、2〜4週毎の注射を6ヶ月、4〜8週毎の注射を数年維持し、5年間の継続を必要とします。原理の詳細は不明ですが、IL-5というサイトカインの産生抑制が起こっています。治療完結にはかなりの時間と労力を要しますが、再発率は低く根治率が高い治療法です。 A非特異的刺激療法:週一回の血液製剤注射を6〜12回行います。ヒスタミンの遊離抑制が起こります。保険では比較的安全性の高い(40年間で事故報告無し)グロブリン製剤を、自費診療では安全な自己血液を用います。
手術治療 @CO2レーザー下鼻甲介粘膜蒸散術:レーザーによって焼かれた粘膜が再生時に扁平上皮化生する事により治癒します。(粘液を産生するところが皮膚の様な組織にかわることにより治しますが、全ての粘膜が置き換わる訳ではなく、数回の治療で症状が軽快していきます) A下鼻甲介粘膜凝固術:針状電極の刺入通電により、粘膜の血管を凝固変性します。
新しい治療法 @舌下免疫療法:口腔内から吸収させる減感作治療です。試験成績は良好なようです。遺伝子組み替え技術を用い、米の中にスギの抗原を微量混ぜるスギ花粉症緩和GM米は消費者運動により追放されましたが、その後の消息は聞こえてきません。(糖尿病患者さんの使うインスリンは、遺伝子組み替え技術により随分便利になってきましたが。) AAg-IT:抗原特異的にTh1を誘導、Th2を抑制することによりIgE増加を抑えます。ヨーロッパでは成果を上げているそうです。 B抗IgE抗体:IgEと結合することにより肥満細胞がIgEと結合することを妨げ、アレルギー反応を抑制します。現在気管支喘息に保険適応があります。注射薬です。
参考:日本医師会雑誌 平成20年1月 花粉症の最新情報
鼻アレルギー診療ガイドライン